1999年5月21日、ヨーロッパで1台のNINTENDO64用ソフトが産声を上げました。それこそが、今や世界最大級の対戦アクション大作となったシリーズの原点『大乱闘スマッシュブラザーズ(Super Smash Bros.)』です。日本では同年1月に発売されていましたが、この5月の欧州リリースを皮切りに、本作の熱狂は文字通り世界中へと飛び火していきました。マリオ、リンク、カービィ、ピカチュウといった、本来なら交わるはずのなかった任天堂の看板キャラクターたちが一堂に会し、作品の垣根を越えてガチンコバトルを繰り広げるというコンセプトは、当時の子どもたちだけでなく、すべてのゲームファンに強烈な衝撃を与えました。
本作の最大の特徴であり大発明となったのが、「相手の体力を減らすのではなく、画面外へ吹き飛ばせば勝ち」という独自のルールです。従来の対戦格闘ゲームのような複雑なコマンド入力は一切排除され、3Dスティックとボタンの組み合わせだけで誰もが直感的に技を繰り出せます。攻撃を当てるほど「蓄積ダメージ(%)」が上昇し、パーセンテージが高いほど文字通り「スマッシュ攻撃」で遥か彼方へ吹っ飛んでいく爽快感は、格闘ゲームの敷居を一気に下げ、誰もが笑顔で騒げる「対戦アクション」という新ジャンルを確立しました。
さらに、ハプニング性を高めるステージギミックや、一発逆転を可能にするアイテムの存在が、実力差を絶妙にカバーする「パーティーゲーム」としての完成度を極限まで高めていました。その一方で、フレーム単位の駆け引きやベクトル反転といった奥深いテクニックも内包されており、カジュアル勢からガチ勢までを虜にする奇跡的なゲームバランスを実現していたのです。
開発を手掛けたハル研究所の桜井政博氏や岩田聡氏らが、当初は「格闘ゲーム竜王」というオリジナル企画からスタートさせ、最終的に任天堂キャラクターを借り受けて完成させたという逸話も有名です。4人集まれば時間が溶けるように過ぎていったあのブラウン管の記憶――。誕生から四半世紀以上が経ち、最新作が世界的なeスポーツ種目となった今だからこそ、64版の「8人の勇者」によるシンプルで熱い原点に、いま一度触れてみてはいかがでしょうか。