1949年5月28日に生まれたトレヴァー・ホーンは、単なるミュージシャンという枠に収まらず、「80年代の音を作った男」として世界中の音楽史にその名を刻んでいます。彼が手がけた楽曲は、今聴いても色褪せない先鋭的なサウンドと、緻密に計算された構築美に溢れています。
■ 「ビデオ・スターの悲劇」から始まった伝説
彼のキャリアにおいて、世界中に最初の衝撃を与えたのはバグルス(The Buggles)としての活動でしょう。1979年にリリースされ、日本のラジオやヒットチャートでもお馴染みとなった楽曲『ラジオ・スターの悲劇(Video Killed the Radio Star)』は、シンセサイザーを大胆にフィーチャーしたキャッチーなメロディと、どこか哀愁を帯びたボーカルのエフェクトが特徴でした。
この曲は、1981年にアメリカで「MTV」が放送を開始した際、歴史上最初に放映されたミュージック・ビデオとしても知られています。まさに「目で見る音楽の時代」の幕開けを象徴する存在となったのです。
■ プロデューサーとしての開花と「サンプリング」の革新
バグルスや、一時的に加入した高名なプログレッシブ・ロックバンド「イエス(Yes)」での活動を経て、トレヴァーはプロデューサーとしての才能を爆発させます。
1980年代前半、彼は最先端のデジタルサンプラー「フェアライトCMI」を駆使し、それまでの音楽制作の常識を覆しました。
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アート・オブ・ノイズ(The Art of Noise)では、車のエンジン音やクラッシュ音など、日常のあらゆる「ノイズ」を音楽へと昇華。
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フランキー・ゴーズ・トゥ・ハリウッドの『リラックス(Relax)』では、圧倒的な音圧と過激なダンス・ビートで世界的な大ヒットを記録。
彼が生み出すサウンドは、重厚な低音とクリアな高音が完璧なバランスで配置されており、当時のオーディオ・マニアたちからも「システムのチェック用ディスク」として重宝されるほどのクオリティを誇っていました。
■ 時代を超えて愛される「トレヴァー・サウンド」
彼のプロデュースワークは90年代以降も衰えることを知らず、シール(Seal)の『キス・フロム・ア・ローズ』でグラミー賞を受賞。さらにペット・ショップ・ボーイズやt.A.T.u.、さらには日本のアーティストの楽曲に関わるなど、ジャンルを問わずその手腕を発揮し続けました。
今日、彼が蒔いた「サンプリング」や「電子音と生楽器の融合」という種は、現代のDTMやヒップホップ、EDMといったあらゆるポップ・ミュージックの当たり前の光景として根付いています。
5月28日の今日、久しぶりに『ラジオ・スターの悲劇』や彼の手がけた名曲たちをスピーカーで鳴らし、その立体的な音響世界に耳を傾けてみてはいかがでしょうか。